しにたい

最初はちょっとした憧れだったのかもしれない。近くの駐車場に止まった車の中で、勃起した男性の陰茎を舐めた。「そこが感じるんだよ」と言われて髪の毛をつかまれ、男性の肛門を舐めた。「もっと舌を入れてくれ」。男性は最後はフェラチオでいった。帰り際車から降りるとき、「お駄賃」として渡されたのは2千円だった。そのあともしつこくメールが来たが無視している。

男は顔が見えないといいながら携帯のLEDフラッシュをつける。
「ほら、おちんちん大好きって言ってごらん?」
「おちんちんらいすき!」
「よく聞こえないなあ」
駐車場の向かいからはファミリーマートの照明が入ってくる。

これに懲りてしばらく援助交際はしていなかった。しかし大学に行けなくなったころ、ふと金も稼げない大学にも行かない誰にも必要とされない人間が果たして社会に必要なのだろうか――。効かないジェイゾロフトを飲みながら毎日手首を切っていた。

援助交際には相手方がいる。その相手方は私を求めてくれている。私は歌舞伎町のホテルやレンタルルームに拠点を移して、再び「募集」を開始した。2千円ではないが、安売りはしていたと思う。30代の男に「ここが気持ちいのか、変態だな」と言われ、異物が挿入されている違和感をこらえながら気持ちがいいと言った。そんなことを何十回と繰り返した。おかげで、安くてきれいな歌舞伎町のホテルには詳しくなった。

たとえ性的にであっても、人から求められることがうれしかった。彼らは殴ることもしないし、怒鳴ることもない。コンビニでジュースも買ってくれるし、たまにごはんも奢ってくれる。

私はもう、援助交際をやめることができなくなってしまったのかもしれない。10代も残り50日もない。死ぬことは怖い。失敗することが。でもその恐怖を乗り越えた先に、クソみたいな人生とは違う世界があると、私は信じている。